柳清水
下小松字千松寺には、柳清水と呼ばれる清水が湧いていて、次のような言い伝えがあります。
日照りが続き、川は干上がり、村中の井戸は枯れ、村人が飲み水にも事欠くような日々を過ごしていたある日、今にも倒れそうな僧侶が村に現れ、一杯の水を所望した。村はずれの農家に住む老婆が水桶にたった茶碗一杯だけ残った水を快く差し出すと、おいしそうに飲み干した。翌朝、僧侶がお礼に水を進呈するといって、持っていた錫杖を地面に突き立てると、そこからこんこんと水が湧き出した。僧侶は傍に柳の木を植えると、どこへともなく立ち去った。村ではこの僧侶は弘法大師様ではないかという話になり、弘法様お授けの水と伝えている─。
かつては、米沢の佐藤清水、川樋の不老泉とともに置賜の三清水と称されていました。米沢藩政期には、下平柳から毎日この水を汲みに来て、年老いた親に飲ませていた人がその善行を称えられ、藩主より褒美を出されたという記録が残っています。
現在、残念ながら飲むことはできなくなりましたが、昔はお茶を嗜む人が水を汲みに来る姿がみられたほか、「末期の水」には是非この水を飲みたいものだとも語り伝えられていたということです。
2020年9月15日発行 町報かわにし9月号掲載