墨書土器
墨書(ぼくしょ)土器とは、墨で文字が記されている土器のことで、おもに奈良・平安時代の遺跡から出土するものです。組織や官職、地名や人名などの所有者に関する情報や、目的・用途、祭祀・儀礼に関する情報が記されていると考えられています。なかには人の顔などの落書きがあるものや、廃棄後に文字を書く練習をしたと思われるものも確認されています。
本町では、奈良時代後期~平安時代の置賜郡衙(ぐんが)(郡役所)跡と考えられている道伝遺跡(大字下小松)から、昭和57年の第三次調査時点でおよそ500点の墨書土器が出土しています。椀形の器「坏(つき)」の底部外面や体部外面に1文字か2文字が記されており、文字の種類は43種、このうち「目」が42点、「平」が40点、「二万」が21点、「林」が16点と多くみられます。年代により記されている文字が異なることや、古い年代ほど数が多いという特徴が確認されています。
当時、日常的に文字を使用する場所は役所や寺院に限られていました。道伝遺跡からは、墨書土器をはじめ皿を硯に転用したものや、古代の役人のみが使用していたとされる二面硯、税収に関する公的な情報が記された木簡など文字に関する遺物が多数出土しており、置賜郡衙跡と推定される重要な根拠となっています。
※この資料は町埋蔵文化財資料展示館でご覧いただけます。
2021年9月15日発行 町報かわにし9月号掲載