↑板碑2基に梵字が刻まれた家形塔婆(吉島地区、広沢寺境内)
家形塔婆
家形塔婆とは、家形に彫り込んだ石の中に複数の板碑や梵字などが刻まれているもので、置賜地域に多くみられる石碑です。龕殿(がんでん)型板碑、厨子型板碑ともいわれ、本町では同様のものがおよそ22基確認されています。なかでも、吉島地区大字洲島にあるものは阿弥陀三尊像が浮き彫りされている珍しいもので、町指定文化財となっています。
これらの造立年代は定かではありませんが、近隣の地域において、年号のあるものの中で最も古いものは米沢市大字小菅にある延文年間(1356~1361)のもので、それ以前のものは現時点で確認されていないことから、南北朝時代頃に流行した形式ではないかと考えられます。一説には雪の重さから中の板碑を守るために生み出された形であるともいわれています。
元は何らかの供養のために造立されたとみられる家形塔婆ですが、なかにはかつて橋を架ける際に建材として利用され、碑面を下に向けていたためにかえって摩滅から守られたものや、道路沿いに移され、現在は道祖神として近所の人に大切に祀られているものもあります。時代の流れとともにその役割を変化させながら、今日もわたしたちにその姿を伝えています。
2021年5月15日発行 町報かわにし5月号掲載